19 ゲートキーパーを確保しよう

 『一人で抱えないために』

 抑うつ状態になると、とにかく自分を責め続けてしまう。私の場合は、そんな状態でした。あらゆることで自分を責めます。例えば、お茶をこぼしただけでも、自分をひどく責めてしまう。今振り返ると、物事を捉える認知そのものが、普段とは違っていたのだと思います。自分では、そのことに気がつきません。でも、その状態では、物事や状況を正確に判断することが難しくなることがあります。そこに、希死念慮が重なってくると、「自分は必要のない人間だ」「この苦しみを終わらせるには、消えるしかない」そんな結論に傾いてしまうことがあります。そして、実際に行動へ移してしまうこともあります。だからこそ、一人で抱え込まないことが大切です。そんな異変に気がつき、声をかけ、話しを聴き、必要な支援につなぐ人を「ゲートキーパー」と呼びます。

厚生労働省では、ゲートキーパーの役割として

「変化に気づく」「じっくりと耳を傾ける」「支援先につなげる」「温かく見守る」

という4つを示しています。特別な資格がなくても、誰でもゲートキーパーになることができます。そして、ゲートキーパーは家族とは限りません。友人かもしれない。同僚かもしれない。兄弟かもしれない。私の場合は、兄弟、友人、同僚がゲートキーパーでした。ここで、抑うつ状態にある本人にも伝えたいことがあります。自分が苦しい時に連絡をできる人を、あらかじめ見つけておいてください。私は、自分の苦しみや抑うつ状態の現状を話せる相手は限られていました。例えば、親友が5人いたとしても、その5人全員に打ち明けられるわけではありません。どんなに仲が良くてもです。「この人なら話せる」「この人には連絡できる」「この人なら、何も否定せずに聴いてくれる」そんな相手がいることが大切です。その人があなたにとってのゲートキーパーになり得ます。だから、元気なときに、「もし自分が本当に苦しくなったら、この人に連絡しよう」と思える人を、少なくとも一人、頭の中に置いておいてください。できれば、実際に、「もし僕がかなり落ち込んだときは、話しを聴いてほしい」と伝えておくのもいいと思います。そして、ゲートキーパーを確保するというのは、「自分を一人で支えてくれる人を一人作る」という意味ではありません。

「苦しくなったときに、誰かにつながるための入口うを作っておく」という意味です。

もし、連絡できる人が見当たらない場合には、相談窓口につながってください。厚生労働省は、電話だけでなくSNSやオンラインチャットを含む相談窓口を案内しています。例えば「#いのちSOS」は、「死にたい」「消えたい」「生きることに疲れた」といった気持ちを専門の相談員が受け止める窓口として、24時間365日案内されています。では、どこにもつながらないと感じたら、どうしたらいいのでしょうか。

 私自身の経験では、希死念慮には波がありました。強烈に押し寄せてくる時間があっても、その状態が永遠に同じ強さで続いたわけではありません。だから、強い波が来たときには、「この気持ちがずっと続く」と決めつけないでください。

今は判断しない。今は行動を決めない。まず、この波をやり過ごす。そして、少しでも落ち着いたら、誰かにつながる。それでいいのです。

もし具体的な計画や準備がある、今すぐ自分を傷つける危険があるという場合は、時間を測って耐えることを目標にせず、一人にならず、身近な人や主治医、相談窓口、緊急医療につながってください。

一人で耐えるのではなく、助けを求めてください。

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