『戻り方を知っている』
抑うつ状態、特にうつ病では、症状が落ち着いて「治った」と思えるようになっても、医学的には「治癒」ではなく「寛解」という表現が用いられます。
ここで、少し驚くかもしれません。「じゃあ、元には戻らないの?」そう思うかもしれません。
私自身、抑うつ状態を経験してから、以前よりも気になるようになったことがあります。言葉に過敏になる。仕事のことを考えると、少し緊張する。ちょっとした出来事でも「大丈夫かな?」と少しだけいつも以上に気になる。以前なら流せていたことに、反応してしまう。いつもではありませんが、そんな変化を感じることがあります。でも一方で、以前は気になって仕方なかったことが、今ではまったく気にならなくなったこともあります。
つまり、すべてが「過敏になった」というわけではありません。過敏になった部分もあれば、逆に気にならなくなった部分もある。以前の自分と、まったく同じではない。私は、そんなふうに感じてしまいます。
自分が変わったように感じられることや治癒ではなく寛解という表現に対して少し悲観してしまいますか?
私は、悲観する必要はないと思っています。確かに、治癒ではなく寛解という表現は、再発のリスクを包含しているからだと思います。また再発してしまったらどうしよう。と考えてしまうこともあるかもしれません。
でも、私は悲観していません。なぜなら、抑うつ状態になって、そこから再び戻ってきたから、別角度から見ると「戻り方を知っている」ということなんですよね。
これって、ものすごく大きなことだと思いませんか?
一度、知らない場所に行ったとしても、ナビゲーションがあれば家に帰ることができます。
あなたはどうでしょう。最初はナビゲーションもありませんでした。それでも、苦しみながら、自分なりに一歩ずつ戻ってきた。
そして今は、その経験があります。
「こういう状態になると危ない」
「こういうときは休んだ方がいい」
「こうすると楽になる」
「この状態なら、まだ無理をしないほうがいい」
そういう、自分自身の取り扱い説明書のようなものを、以前より持っているのです。これは、かなり強力な安心材料ではないでしょうか。だから私は、以前とまったく同じ自分に戻ることだけが「回復」なのではない、と思っています。
苦しい経験をした。
そこから戻ってきた。
そして、戻り方を知った。
その経験を持ったまま、これからの人生を歩いていく。
それは、バージョンアップした自分なのではないでしょうか。私は、これを「Reborn」と捉えています。生まれ変わった、というより、「経験を持って、もう一度生き直す」そんな感覚です。だから、以前よりストレスに敏感になったように感じることがあっても、必要以上に悲観しなくていい。あなたには、もう「戻り方」というナビゲーションがあります。一度、あれほど苦しい場所から戻ってきた。その経験そのものが、これからのあなたを支える力になる。私は、そんなふうに「Reborn」を捉えています。

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