38 Rebornという考え方

『戻り方を知っている』

 抑うつ状態、特にうつ病では、症状が落ち着いて「治った」と思えるようになっても、医学的には「治癒」ではなく「寛解」という表現が使われることがあります。

ここで、少し驚くかもしれません。「じゃあ、元には戻らないの?」そう思うかもしれません。

私自身、抑うつ状態を経験してから、以前よりも気になるようになったことがあります。自との言葉に過敏になる。仕事のことを考えると、少し緊張する。ちょっとした出来事でも「大丈夫かな?」と少しだけいつも以上に気になる。以前なら流せていたことに、反応してしまう。そんな変化を感じることがあります。でも一方で、以前は気になってしかたなかったことが、今ではまったくきにならなくなったこともあります。

つまり、すべてが「過敏になった」というわけではありません。過敏になった部分もあれば、逆に気にならなくなった部分もある。以前の自分と、まったく同じではない。私は、そんなふうに感じてしまいます。

でもね。私は、そこまで悲観する必要はないと思っています。なぜなら、抑うつ状態になって、そこから再び戻ってきたあなたは、「戻り方を知っている」からです。

これって、ものすごく大きなことだと思いませんか?

一度、知らない場所に行ったとしても、ナビゲーションがあれば家に帰ることができます。

あなたはどうでしょう。最初はナビゲーションもありませんでした。それでも、苦しみながら、自分なりに一歩ずつ戻ってきた。

そして今は、その経験があります。

「こういう状態になると危ない」

「こういうときは休んだ方がいい」

「こうすると楽になる」

「この状態なら、まだ無理をしないほうがいい」

そういう、自分自身の取り扱い説明書のようなものを、以前より持っているのです。これは、かなり強力な安心材料ではないでしょうか。だから私は、以前とまったく同じ自分に戻ることだけが「回復」なのではないかと思っています。

苦しい経験をした。

そこから戻ってきた。

そして、戻り方を知った。

その経験を持ったまま、これからの人生を歩いていく。

それは、ある意味でバージョンアップした自分まのではないでしょうか。私は、これを「Reborn」と捉えています。生まれ変わった、というより、「経験を持って、もう一度生きなおす」そんな感覚です。だから、以前よりストレスに敏感になったように感じることがあっても、必要以上に悲観しなくていい。あなたには、もう「戻り方」というナビゲーションがあります。一度、あれほど苦しい場所から戻ってきた。その経験そのものが、これからのあなたを支える力になる。私は、そんなふうに「Reborn」を捉えています。

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