33 回復の要因も一つではない

 『治すためにやったわけじゃなかった』

 ストレスを受け止めるタンクがいっぱいになり、あふれ出てしまう。それが、私が考える抑うつ状態のイメージです。そして、そのタンクをいっぱいにしてしまう要因は、一つだけではありません。職場のことに限らず、家族のこと、友人のこと、災害のこと。さまざまな出来事やストレスが積み重なって、タンクがいっぱいになっていく。それと同じように、回復に寄与するものも、一つだけではありません。「薬を飲めば、それですべて解決する」という単純な話でもないと思っています。もちろん、服薬は重要な治療の選択肢の一つです。でも、私の場合、回復の一助になったものは、ほかにもありました。

その一つが、日光を浴びること。そして、身体を動かすこと。でした。日中に陽ざしを浴びることは、体内時計、つまり概日リズムを整えることにも関係しています。また、身体を動かすことや、何か一つの作業に集中することも、回復していく過程の中で意味を持つことがあります。私の場合、その条件に結果として合致していたが、農作業と、大工の現場での作業でした。

私の友人であり、先輩でもある人は、大工の親方をしています。休職中、少しずつ身体が動くようになってきた頃、その先輩に誘ってもらい、大工の現場を手伝いに行く機会がありました。陽ざしを浴びながら、住宅建設の現場で汗を流す。

今振り返ってみると、これが私にとって、回復に寄与する条件とかなり合致していたのだと思います。そして、ただ身体を動かしていただけではありません。道具を使いながら、先輩に指示された作業に没頭する。目の前の作業に集中する。次に何をするのかを考える。道具をどう使うかを判断する。

こうして作業をしている間は、頭の中で延々と繰り返されていた反芻から、一時的に離れることができました。今振り返ると、こうした作業には、注意を向けたり、情報を一時的に保持したりするワーキングメモリーなど、さまざまな認知機能を使っていたのだと思います。そして、こうした認知的な活動に関わる領域の一つが、背外側前頭前野です。

もちろん、農作業や大工作業をすれば抑うつ状態が治る、という単純な話ではありません。人によっては、回復を支えるものは違います。私の場合は、服薬や休養だけではなく、

陽ざしを浴びること。

身体を動かすこと。

誰かと一緒に作業すること。

目の前の作業に集中すること。

こうしたものが重なって、回復の助けになったのだと思っています。抑うつ状態になる要因が一つではないのなら、回復の要因も一つではない。

私は、自分の経験からそう感じています。

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